Tuesday, 25 June 2024

習指導部「国共合作」で日米に対抗 バイデン/岸田首脳会談を牽制

2024年4月10日

日米首脳会談のタイミングにぶつけるかのように、中国の習近平 (しゅう・きんぺい) 国家主席が4月10日に台湾の馬英九 (ば・えいきゅう) 前総統と会談した。

習指導部は独立派と見なす台湾与党、民主進歩党民進党新政権日米の連携に対抗する「最大の効果」(中国の外交筋)を
狙った。

中国共産党は、馬氏が所属する対中融和路線の国民党を取り込み、「国共合作」で統一を進めたい考えだ。

 

▽揺さぶり

それぞれ赤と青のネクタイをした習氏と馬氏。

笑顔で16秒間、約8年半ぶりの握手を交わした。

会談で「中華民族は偉大な民族だ」と言う習氏に「(中台の) 人民は共に中華民族に属する」と応じる馬氏。

「馬先生」「習先生」と呼び合った。

習指導部は「一つの中国」を認めない民進党政権を敵視。

1月の台湾総統選で同党の頼清徳 (らい・せいとく) 副総統当選後、台湾に圧力をかけている。

台湾の離島、金門島付近で2月に起きた中国漁船転覆事故を契機に、海警局によるパトロールを常態化し現状変更の動きを見せる。


 一方、総統選と同時実施の立法委員(国会議員)選で国民党が第1党となったことを念頭に中国は「民進党は台湾の主流の民意を代表しているわけではない」(台湾事務弁公室)とも主張。

それでも「3期連続の民進党に対する長期政権への危機感」(香港の政治学者) から、民進党と国民党に硬軟両様の対応を取り、台湾社会を揺さぶる。

 

▽緩和

日米は5月に発足する頼氏の新政権とも連携を強化させる方針。

4月10日は台湾防衛支援などを定めた米国の台湾関係法成立からちょうど45年の記念日でもある。


民進党の一部立法委員は「中国は馬氏との会談を対米圧力の道具にし、(馬氏は) 中国の統一戦線工作のコマになった」と指摘。

ただ民進党政権は「中台間で交流があることは良いことだ」(邱太三:きゅう・たいさん・大陸委員会主任委員) と馬氏訪中に対する表だった批判を控える。


背景には中台間の緊張緩和につながるとの期待がある。

国民党系メディアの幹部は「習氏が馬氏と会談した後に、馬氏のメンツを潰 (つぶ) すような行動に出るとは考えにくい。

会談は結果的に頼新政権を助ける側面もある」と分析している。

 

▽後継

共産党と国民党は日中戦争の時期などに「国共合作」と呼ばれる協力関係を結び共闘した歴史がある。

中台関係筋によると、今回の馬氏訪中は中国側が働きかけて実現。

2005年に共産党の胡錦濤 (こ・きんとう) 総書記(当時)と60年ぶりの「国共トップ会談」を行った国民党の連戦 (れん・せん) 主席 (同) の後継として、馬氏を習氏の台湾側のカウンターパートに位置付けた可能性もある。


馬氏も自身の影響力強化を狙う。

北京郊外の中国人民抗日戦争記念館を訪れるなどし「抗日の歴史」を強調。

中国に寄り添ってみせた。


ただ、台湾では台湾人意識が高まり、国民党内でも親中路線への警戒感は根強い。

馬氏を通じた「台湾統一戦線工作」の効果は限定的との見方も多い。



*Picture:© jamesonwu1972 / shutterstock.com

 


(2024年5月1日号掲載)